昨日から上京しています。1年ぶりの都会。
人混みの中をすり抜けて歩く感覚を取り戻すのに、ちょっとだけ時間がいりました。
八丈では脱ぎ着のしやすいサンダルしか履かないし、移動もほとんど車を使います。
履きなれた靴のはずなのに、1時間渋谷の街を歩いただけで僕の足は重度の靴擦れ・・・もう、ばか。
伊豆諸島・八丈島より、石野です。
上京する前、僕は八丈の海で最後に何をするか考えました。
思いついたのは、見つけられるだけコケギンポを探すこと。
きっかけは、コケギンポを青抜きできないかと考えたことでした。
地を這っているとそこら中で見つかるコケギンポなのに、
どれも岩のくぼみの中や、根の段差で影になるところばかり。
これは海中のコケギンポを見つけ尽くすつもりで探さないといけないな。
僕は覚悟を決めて挑戦しました。
いったい何匹見つけたのか分かりません。
30匹、いや50匹はいたかもしれません。
その中で青抜きが出来る位置にいたのが2匹、花畑の中にいたのが1匹でした。
そして、事件はこの花畑ギンポを見つけた時に起きました。
花の絨毯から顔を覗かせているようなコケギンポを発見して、
沸き立つ僕は無我夢中でシャッターを切り続けました。
なかなか思うように撮れなかったので、撮れるまで毎日通いました。
3日ほど経った頃でしょうか、ファインダーの中で起きたある信じられない出来事に目を疑いました。
なんと!絨毯の一角が、意識しなければ見逃してしまうほどゆっくりと、
でも着実に移動していくのです。
ん?
え。。。
えええええ!
動くはずのないものが目の前で動いている。
僕は幻覚でも見えているんじゃないかと本当に困惑しました。
目をこらしてみると、なにやら足のようなものが右、左、右、と交互に前に運ばれています。
カニだ!
まさかこんなところにカニがいるなんて。
しかもここまで完璧に周囲と同化できるなんて。
動き出さなかったら気付かないまま上京していたことでしょう。
帰ったときにまだいるかどうかわからないし、ラッキーな瞬間でした。
ダイビングをしていると生き物の生態に感動することは多々あっても、
驚いた、を通り越して恐怖を感じたのは初めてでした。